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2007 年06 月15 日

医療事故紛争処理機構

日経新聞の夕刊に「医療事故紛争解決は対話で 被害者側参加し調停機関」という見出しで、医療事故紛争を話し合いで解決する紛争処理機構をADR(裁判外処理機関)として設立するという。まずは、メディエーターを交えて被害者側と医療者側が対話をして事実関係を整理し、ついで事故の内容に応じて医師や弁護士を審査委員とする中立評価パネルが因果関係等の評価をして調停案を提示するという。

要は、医師側と被害者側、弁護士や日本医療機能評価機構や早稲田大学紛争交渉研究所が関与するのがミソだ。

裁判所の調停や弁護士会のあっせん仲裁センターと並ぶ医療紛争のADRであり、楽しみだ。

しかし、私の調停の経験からすると、最も成立率が低い紛争類型が医療紛争だ。今も、私が担当している事件には産科の事件や整形の事件があるが、難しい。何が難しいかというと、事実の認識にまず争いがある。次に、事実の評価に争いがある。双方の視点と水準が決定的に違うからだ。それが一番際だっているのが産科だろう。健康で元気に生まれてきて当たり前、医者なんだから病気の鑑別ができて当たり前と見るか、それとも、現実の医療水準や足だけを触って象を当てる難しさに思い至るか。しかも、被害者側からすると、人の命がなくなったり、高度の障害を抱えているから、医師に対する責任追及の矛先は極めて厳しいものがある。

それを話し合いで解決するには、医師と患者がそれぞれの立場に配慮をし、共感し、信頼関係を回復することが不可欠なのだろう。命がなくなった、高度の障害が残ったというのは極めて不幸なことだ。しかし、起こってしまったことは二度と取り返しがつかない。いくら医師の責任を追及したところで返っては来ない。その不幸をともに乗り越える力、その不幸に意味を感じる力を調停を通して修得してもらうことが調停の真の目的なのだと思う。

投稿者:ゆかわat 23 :37| ビジネス | コメント(0 )

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